これでいいのだ!(8) 風(ふう)が悪い

同調圧力(世間体)の正体とは?
「風が悪い」というのは、私の故郷の方言です。
世間体が悪い、恥ずかしいという意味です。
私の母は、この言葉をよく口にしており、「こうあるべき。あらねばならない」というのがとても強い人でした。
地方の小さな町なので、世間体、体裁というのが、生活する上での一つの価値基準です。
それは、親から子へと引き継がれ、私の生き方や子育てに大きな影響を与えていました。
もちろん、地域社会は、近所がみんな顔見知りで、お付き合いもあり、犯罪率が低いといった良い面もあります。
ほぼほぼ普通に(もちろん辛いことや傷ついたことは多々ありましたよ)進学し、就職し、結婚してきた私にとって、育てにくい息子の子育ては、世間の息苦しさを強く感じさせるものでした。
集団に、学校に、適応できないわが子は、私を苦しめる恥ずかしい存在のように感じていました。
(今は違いますよ!)
息子の学校や地域で、私は心のバリアを張って、周囲に馴染めませんでした。
息子のことを聞かれたり話題にされるのを避けていました。
それは、私が「風が悪い」という考え方に支配されていたからです。
世間体を第一に考えて、息子の気持ちに寄り添えていなかったのです。
そのからくりを教えてくれた本があります。
「同調圧力 日本社会はなぜ息苦しいのか」鴻上尚志 佐藤直樹著
「その息苦しさの原因が日本特有の同調圧力であり、それを作り出すのは世間である。あなたを苦しませている正体を知ることが、幸福への第一歩です」
同調圧力 日本社会はなぜ息苦しいのか 鴻上尚志 佐藤直樹著 より
「『みんな同じ』ということは『違う人にならないでね』ということですね。まさに同調圧力です」
同書より
みんなと同じ方向に向かわないでいい
同調圧力は、目に見えにくいものですが、学校は同調圧力に満ちています。
分かりやすいのは、運動会のような行事の場です。
息子は、それがきっかけで、小6の時に不登校が始まりました。
思い出すのは、小学校の学級対抗大縄大会です。
クラスごとに途切れないように大縄を飛び続け、その回数を競います。先生も子どもも熱くなり、優勝めざして休憩時間は練習に明け暮れます。(私も熱くなるタイプです)
でも、息子は運動が大の苦手で、みんながそれに向かって一丸となることに意味が見い出せませんでした。
やる気のない態度や協調性のなさがもろに見えるので、周囲から白い目で見られます。
大縄とび
周りはイライラしたでしょうが、本人にも相当なストレスがかかったはずです。大勢の子どもの中には、息子のような感じ方をする子もいることを彼は、教えてくれました。
それは、みんなが同じ方向に向かいがちな社会にとって、必要な感性かもしれません。
みんな同じはずもないし、同じになる必要もありません。それを認め、尊重する集団であってほしいと思います。
明治時代に富国強兵のために作られた日本の学校制度は、すでに時代に合わなくなっています。
規律やルールはある程度必要ですが、本来学校は、学ぶ楽しさを知る場所であり、型にはまった指示待ち人間を作る場所ではありません。
自分で考え、生きていける人になるように、一律ではない個に応じた教育に、早く変わってほしいです。
世間のルールからはみ出した人も受け入れる寛容な社会、そして、自分は自分というぶれない自分軸を持つこと、世間とのつながり方を自分なりに考えること等が息苦しさから解放されるヒントです。
小さな頃から刷り込まれてきた価値観を変えることは大変です。
それは、ある意味、これまでの自分を否定することです。
でも、親がその価値観を変えると、子どもは楽になります。
そして、その先には幸せな生き方が待っていると思います。
